なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注36

公開: 2021年4月29日

更新: 2021年5月29日

注36. 短期間で日本語に精通した人材を育成する方法

米国社会では、母国語ではない言語の能力を獲得する方法についての研究が古くから盛んであった。例えば、行動科学の理論に基づく方法や、チョムスキーの生成文法理論に基づく方法などである。行動科学に基づく方法では、言語能力は、反復練習によって獲得できるとする。生成文法に基づく方法では、人間の文法を理解する能力を利用して、母国語ではない言語の文法も獲得できるとする。

いずれの理論でも、人間の言語獲得能力には個人差があり、能力の高い人々と、能力の低い人々がいることを前提としている。米国の軍隊では、言語獲得能力の高い人々をテストによって選別し、選ばれた人々に特別な短期訓練を施す。この訓練では、期間中は、母国語を話すことを禁じられ、全て「学ぶべき言語」だけで話すことが求められる。言語の言葉の意味の説明も、文法の説明も、その言葉を使って行われる。

この訓練の途中で脱落する者も少なくないが、概ね半年程度の訓練で、一通りの会話をその言語だけで行えるようになる。この後は、語彙を増やし、様々な表現の仕方を、実地訓練を通して学べば良いのである。第2次世界大戦が始まった時、日本軍では、米軍の兵士は日本語を理解できないから、平文で電報を送っても、理解できるわけがないと信じられていた。しかし、米軍は、暗号化された電報も、解読して、翻訳していた。

1941年12月7日に、日本の外務省から、在米日本大使館へ送信された、対米交渉打ち切りを宣言した東郷外相から、米国国務省のハル長官への暗号電報も、米国側で暗号を解かれた文章が、英訳された補助文書と共に、ルーズベルト大統領とハル長官に手渡されていたとする記録が残されている。この外交文書がハル長官に手渡される数時間前のことであった。その直後、ルーズベルト大統領には、真珠湾攻撃の第一報が知らされた。

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